ねえねえ知ってた? 平成十九年五月 |
平成19年5月31日(木)
昨年、私が読んだ本の中で共感を呼んだものに、平野秀典さんの著書があります。これまで「お客様の感動を設計するハッピーエンドのつくり方」「ギフト」「共感力」などを読んできました。彼は、俳優として10年ほど活躍していた経験を元に、演劇とマーケティングを融合させた「ドラマティックマーケティング」を提唱されている方。一言でいうなら、営業マンなら「説得力」ではなく、「共感力」で自社製品を広めてゆく実践です。私、今死ぬほどこれが欲しい!って思っているのです。これって・・共感する力、他の人を理解できる力のことです。理性的な左脳人間のワタクシ、「どうやったら、この力を手に入れられるか?」思案の真っ最中でございます。この方の本では「商品を感動を持って薦める自分の気持ちに、お客様が共感して下さること」も含めていますが、こちらも大切な共感力。マニュアルだけで売っていたのを、開発担当者のご苦労を理解することで、自分の扱う商品への理解と愛着が深まり、劇的な営業成績アップにつながった実例がたくさんあるそうですね。まずは、商品に感動することが大切なのでしょう。そして、その感動をどのような姿勢でお客様に伝えてゆくか・・詳しくは、こちらのサイトでご覧いただくとして、この中の<感動のエピソード>のページの「ハッピーサプライズ」のお話が私のお気に入りとなりました。
この方が表現者として感銘を受け、いろいろな著書の中で紹介しているのが、能の秘伝を綴った「花伝書」。600年ほど前の鎌倉末期に活躍した猿楽能の観阿弥が伝えた極意を、息子の世阿弥が編集した書です。ずっと昔に「観る人を感動させる極意」を考え抜き、実践されてきた方がおられたのですね。 ・人の心に思いもよらぬ感動をもよおさせるやり方。それが花。珍しき花。 ・秘すればこそ花になる。秘さねば花とはならぬ。 ・離見の見(自分とお客様の両方の視点から見ること) ・目前心後(目は前に向けて心は後ろを意識する) サンサンてるよも、落語を創ったり演じたりする上で、取り入れないといけないことなのでしょうね。平野さんがご自身の体験から学ばれたのは「観客が何人いても、たったひとりに向かって話しかけるような意識で演じること」。つまり「今日お越しの300人の皆さ〜ん」ではなく「目の前の大切な方ひとり」を意識して芝居をすると、最高の出来になるという発見です。とは言え彼は、「平野さんの本業は何ですか?」と聞かれた時に「本業は人生です。」と答える方。「私にとって、人生という舞台が一番重要な舞台であり、仕事や演劇はその時々に演じる役割に過ぎないと思っています。」という言葉が印象的でした。 余談ですが、平野さんが長年関わってこられた演劇というものが、神への奉納、もっと言うなら、神と一体化して演じる芸術として生まれ、発展してきたことも目からウロコでしたねえ。ですから、テレビや映画でタレントが演技力も磨かずドラマを演じるのは、太古の演劇の定義からははずれているのでしょう。こちらの演劇の歴史のサイトがとてもわかりやすかったですよ。一番下のNO.1から順に、興味のある箇所だけでもご覧下さいませ。 人生においても、自分自身を与えられた役割を演じる俳優(女優)と観れば、自ずと感情のままに不快な言動をまき散らすこともなくなるでしょう。そのためには「離見の見」という視点をマスターすることが必要になってきますし、更には、神仏と一体となって演じてゆく境地が、その先に待っているような気もします。その背景には、自分の小ささを実感し、自らを明け渡してゆく諦観があるのでしょう。50年近く生かされてきても、まだまだ人生の達人にはなれていない自分を反省します。せっかく長くなった日本人の平均寿命。与えられた時間を、芸事を究める方々同様、更なる心境の向上に使ってゆきたいと思います。 <追記> 随分とお待たせしてしまった上に、とうとう5月の更新は1回だけとなってしまいました。花伝書の内容も深く読み込んで書かないといけなかったのですが、それはまた今後の課題と言うことで・・どうぞお許しくださいませ。 |